ネタバレ注意!
アオイと少佐がネット上で会話している。
アオイ「肉体を喪失しても、思考はネットを巡り、個を特定したままその存在を維持し続けられると?」
義体を捨て、一時的に情報だけになった少佐に対するやや皮肉交じりの疑問。
ちなみに前回ラストで撃たれた少佐は完全リモート状態で、恐らくゴーストはネット上に情報として保存してあった。
その〈情報〉のみの少佐がアオイと話している。
余談だが、バトーはそのリモート状態の少佐とイチャイチャしてたことになる(可哀想だが、バトーらしい)。
少佐はゴーストまでバトーに許していないということか?
少佐「殻を棄てた意思が、ネットの海で個を維持できるとは考えにくい」
〈殻を棄てた意思〉=肉体(義体)なしで純粋な情報と化したゴーストのことか?
少佐は、たとえ替えがきく義体であっても、肉体=殻の重要性を信じている。
アオイ「じゃあ、生きてなお、個を喪失し続ける者にとって、この世界は絶望?」
自分自身のこと。
アオイは肉体を持ち、しかも「笑い男」という歴史に名を残すほどの〈個〉を持ちながらも、多数の模倣犯によりその〈個〉を喪失してき、これからも喪失し続ける。
その喪失が終わるのは彼が世間に正体を明かした時だけだが、そうすると逮捕される。
自分が完全に生きるためには、「笑い男」であるという〈個〉を隠し続けないといけない。
そんな人生には絶望しかないのではないか?という問い。
少佐「とりあえず死んでみるって手もありなんじゃない?」
いっぺん自分も肉体を喪失して情報だけになってみたら?という意味だろう。
サイボーグジョーク(?)
アオイ「あの約束の守り方、最高にチャーミングだった」
「約束」とは、第22話「疑獄」の義体換装シーンでアオイが少佐に告げた、『あなたに笑い男事件の真相を全て伝えます。その上で、これから僕がしでかす最後の挑戦を黙って見ていて欲しいんです。そして、もし僕が敗れて死んだりなんかした場合には、この事件をあなたたちの手で白日のもとに晒してください』というもの。
少佐はその約束を守ったことになる。
「チャーミング」というのは、少佐までが「笑い男」の模倣者になったことを指すのだろう。
検察の捜査を影で指揮する荒巻。
検察からしてみれば荒巻のおかげで捜査までこぎつけられ、しかも手柄までもらえたので恩人といえる。
荒巻は今後この貸しをうまく利用して、新生9課を運営していくのだろう。
荒巻をスカウトしているのは、以前車中で話した法務大臣。
いよいよアオイとご対面。
といっても既にネット上で何度も対面しているので二人にとっては新鮮みはない。
手すりから手をどけると「Fuck You」とあるのは「ライ麦畑でつかまえて」のオマージュ。
以下、引用の元ネタ。
フランスの写真家、Robert Doisneauのこと。
ドワノー、ドアノーなど複数表記あり。
「ライ麦畑でつかまえて」などの著者、Jerome David Salinger。
旧ソ連の映画監督、Dziga Vertov。
検索したところ、大澤真幸「性愛と資本主義」からの引用だそうな(未読、読む気はない)。
フレドリック・ジェイムスンの名前も出てくるが、どこからどこまでがフレドリックでどこからが大澤かは分からない。
アメリカのフランス文学研究者、Fredric Jameson。
フレ"デ"リックは恐らく間違いだろう(あるいは日本ではそれで通ってしまっているのか)。
衒学的な引用祭りが一通り終わると、本第へ。
アオイ「元来、今の社会システムには、そういった現象を引き起こす装置がはじめから内包されてるんだ。僕にはそれが、絶望の始まりに感じられてならないけど、あなたはどう?」
「そういった現象」とは、<オリジナルの不在が、オリジナルなきコピーを生み出してしまう>こと。
アオイはそれを絶望の始まりだとしか思えない(本記事冒頭参照)。
しかし少佐は、並列化の果てに個性を獲得し自己犠牲の精神で散っていったタチコマを思い出す(第25話「硝煙弾雨」参照)。
少佐「だけど私は、情報の並列化の果てに個を取り戻すためのひとつの可能性を見つけたわ」「好奇心…たぶんね」
個人的に、着地点としては少々無難な気もする。
賢いアオイならそれぐらい考えつくと思うのだが…。
ラストシーンで瀬良野とすれ違った男はトグサの知り合いで「笑い男事件」特捜部の深見。
第4話「視覚素子は笑う」で登場した。
瀬良野の車に何か細工をしたのだが、何をしたかは一切不明。
「曲がらねば世は渡れず、正しき者に安らかな眠りを」という台詞は恐らくオリジナルか。
この「笑い男事件」が今後出てくることはないので、この件については永久に明かされることはない。
個人的には、アオイと少佐の会話がうまく着地しすぎたので、余韻を持たせたかったからこういったシーンを挿入したのかなと思う。
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