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攻殻機動隊 Stand Alone Complex 2nd GIG 第9話「絶望という名の希望」解説

https://www.ntv.co.jp/kokaku-s/Ⓒ士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

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*ネタバレ注意!

第8話解説を見る

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公式サイト

www.production-ig.co.jp

 

 

冒頭

タチコマが内庁のコンピュータに侵入した。

その後少佐をシステム内から手引き。

自爆テロ事件

爆破されたのは「ふぐ料理 舌つづみ」の上にある「 aragon」という店。

「本日中に5件の自爆テロが起こる」という犯行予告通りに起きた4件目の自爆テロ。

バトーは難民が起こしたのではないかと推理する。

少佐の潜入捜査

少佐は内庁への潜入捜査を決行する。

タチコマが既に内庁のシステム内に侵入しているので、入口の車停めを操作したり、建物内に潜入した少佐に対し受付(おそらくロボット)や警備ロボットに反応しないよう命令できる。

なぜ難民が自爆テロをするのか

爆破された店舗のうち最初の2件は個別主義者たちが集うサロン。

個別主義者は難民の自立を促すため、支援を断つという思想。

難民が彼らを疎ましく思っているのは当然。

次の2件のテロも難民措置法を隠れ蓑に実利をあげていた団体の持ち物なので、難民から標的にされてもおかしくない。

これで、難民が恨みの末に自爆テロをした線が濃厚になった。

少佐の潜入捜査2

少佐は保安部員と有線し、男の電脳経由でネットにアクセス。

タチコマと連携し、内庁保安部員45名に行動制御ウイルスを注入、全員をフリーズさせる。

デカトンケイル

デカトンケイルとは、ポセイドン・インダストリアルが管理するスーパーコンピュータ。

大量のデータを元に仮想人格を構築することができる。

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デカトンケイル内の合田と少佐の対話

SAC1ラストでの葵と少佐を彷彿とさせる高度な対話シーン。

かなり難解だがSAC 2nd GIGの理解には必要なので出来るだけ詳細に解説してみたい。

ちなみに少佐がここで話しているのは合田本人ではなく彼のデータをもとに構築された仮想人格。

実物よりもデフォルメされた合田と思っていいだろう。

 

  • 少佐「お前は誰だ」
  • 合田「私は合田一人、かつては大日本技研で放射能粉塵除去分子工学ロボットプロジェクトにも従事していた」
  • 少佐『放射能粉塵除去? 日本の奇跡の事だな』

 

日本の奇跡について。

1999年9月、東京が核攻撃され壊滅、その後2010年代にポセイドン・インダストリアル(旧大日本技研)が開発したマイクロマシンによる放射能粉塵除去技術の通称。

これにより日本は驚異的な復興を遂げ、ポセイドン・インダストリアルは莫大な利益を上げ、多国籍企業へと発展した。

 

  • 少佐「技術者としてか?」
  • 合田「とんでもない、私の脳は言語機能に特化している」

 

技術者と間違えられてちょっとキレてる。合田が技術者を見下していることがうかがえる。

 

  • 合田「2度にわたる大戦後、私のプロデュースした放射能除去技術を用いて、この国は再び経済大国にのし上がった。私もその時に、ヒトとしての最上部構造へ行くはずだった。しかし、この国が国際社会の中でたいした地位を獲得できなかったように、私もシステムの中で大きな位置を占めることができなかった」

 

日本の復興や経済発展に貢献したのに、それに見合った地位を得ることができなかったという恨み節。

ちなみにこの「ヒトとしての上部構造」という言葉は、後にクゼも語っている。

 

  • 少佐「社会は、口だけの人間に具体的な評価を与えてくれなかったってことかしら?」

 

少佐らしい皮肉。

とはいえ、合田は「日本の奇跡」をプロデュースしたほどの人物なので口だけの人間とは言えない。相手を挑発して怒らせ、口を滑らせようとする作戦か?

  • 合田「私は、ずいぶん以前から今の社会システムには致命的な構造的欠陥がある事を発見していた。
  • 少佐「それは?」
  • 合田「本来変質しないはずの情報の変質と、個性という名の幻想的オリジナリティが、今の社会システム内において、いとも簡単に並列化を起こしてしまうということだ。それを私は、消費という名のクリエイト行為と名付けている」

 

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「本来変質しないはずの情報」という台詞がとりわけ難しいが、その前の「今の社会システムには」という台詞から考えると見えてくる。

ここでいう「情報」とは、おそらく人間の個体のことだろう。

今の社会システム、つまり攻殻の世界では義体化技術が進んで同じ人間が全く別の個体を獲得できるようになっている。ということは、指紋や声紋、身長、骨格といった「本来変質しないはずの(個人)情報」が容易に変質する社会システムであるといえる。

一方で、いまだに「個性」といった「変質しない個人のオリジナリティ」への幻想も存在する。しかし今の社会システムでは、少佐のような全身義体のサイボーグと生身の人間の見分けすら付かず、また、社会的に同等な権利を与えられている、これが合田の言う「いとも簡単に並列化を起こしてしまう」ということ(攻殻世界における「並列化」とは、コンピュータ用語とは違い、均等、平等といったほどの意味)。

そして、合田はこれを「致命的な欠陥」だとする。

さらに合田はこれを「消費という名のクリエイト行為」と呼ぶ。おそらく、「個」を消費すること(義体化等)で自らをより個性的にクリエイトするという意味。

ここは本編に特に関係ない。

 

  • 少佐「ネットに引きこもった子が辿り着きそうな結論だな」

 

また少佐の皮肉。煽ってるw

 

  • 合田「スタンド・アローン・コンプレックスか?ー

 

合田本人及び内庁が「笑い男事件」について知らないとは考えられない。だから「スタンド・アローン・コンプレックス」という言葉を知っていて当然。

「お前の言いたいことぐらいわかってるよ」と先回りして言うところが嫌味ったらしい。

 

  • ー幸い私には孤独に対する強固なまでの耐性があった。しかしだ、私が社会に及ぼした功績をシステムがまっとうに評価しなかった理由を、私が生まれ持って持ち合わせた資質がそうさせていたのだと気づくのに、ずいぶん時間がかかったよ」

 

その答えはつぎの合田の台詞にある。

 

  • 少佐「つまり、自分に劣等感があった」
  • 合田「いや、存在そのものに問題があったのだ。社会には、システム自身が望む人格と言うものが確実に存在する。人はそれを渇望する。なのにそのことに対してはイタズラなまでに無自覚だ」

 

自分がシステムが望む人格ではなかったと認めている。

意外に自分を客観視できていて侮れない。

 

  • 少佐「今の自分には満足を?」
  • 合田「予想以上にね。物理的身体とは逆説的に、その存在が確認されているゴーストが、実は体の変化に応じて変容するという事実を知っているか?」

 

ゴーストと殻(肉体)という攻殻シリーズに通徹する二元論。

合田はゴーストが殻(肉体)に応じて変化するという説を支持しているよう。

実は少佐も同じ。

少佐はSAC第26話で「殻を捨てた意思がネットの海で個を維持できるとは考えにくい」と葵に言っている。

 

  • 少佐「さぁ?ー

 

自分と同じ考え方なのに、ちょっとイラつきながらはぐらかしている。

同族嫌悪を感じたのか?

  • ーかつて革命に自身の存在意義を見出した思想家がそれを実践してみせたことがあったみたいだけど」

 

「それ」とは、体の変化に応じてゴーストが変容すること。

  • 合田「パトリック・シルベストルか? 私も彼の思想に傾倒したことがある。英雄に憧れ、カリスマを得たいと本気で望んだ。ー

 

シルベストルの話なのに強引に自分の話に持って行くところが傲慢な合田らしい。

 

  • ー私は人の上に立つはずの人間だ。その思いは物心がついた頃から私の中にあった。結果、体がそれを邪魔したわけだが、運命は私に味方した。死線をさまよう事故に遭遇し、私の体は変貌を遂げ、期せずしてゴーストも変化した。ー

 

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昔の冴えない容姿から今の化け物じみた姿になったことで自分のゴーストも変化した。

 

  • ー革命と遭遇することで、先の思想家がそうしたように私も使命を得たのだ。国家というシステムを私が再構築するという使命をね」
  • 少佐「国家改造論者? それとも誇大妄想狂?」
  • 合田「今この国が求めているものは、第三者を消費することでのみ成立する桃源郷の再現だ。ー

 

朝鮮戦争時の特需のことか?

 

  • ーかつてこの国は偶然にもそれを体現した歴史がある。動機なき者たちは今もそれを無自覚に欲している。私は彼らにそれを与えてやるだけだ」

 

難民と国が戦争をすることで国民が利益を得るという状態を合田は作ろうとしているのか?

 

  • 少佐「それで自分が英雄になると?」
  • 合田「ふふふ、今の私にその願望は無い。私の役目はその英雄をプロデュースすること。ー

 

卒論と考えてることは同じ。

 

  • ー動機なき者たちが切望し、しかし声を大にして言えないことを代弁し、実行してくれる行動者を作り出すことだ」

 

動機なき者=一般人。彼らの声を代弁し、実行してくれる行動者を作り出すために合田はウイルスを撒いた。

 

  • 少佐「消費の果ての桃源郷とは冷戦構造下の日本のことか? では、お前がプロデュースするという英雄とは誰だ? 個別の11人か?」

 

この時点で少佐はもちろん、おそらく合田にも誰が英雄となるのかまだわかっていなかったのだろう。

もちろん合田はそれを素直にいうはずはない。

ここでリアルの合田が少佐の潜入捜査に気づき「予想より遅かったな」と言う。

潜入捜査も先に予測していた。

 

  • 少佐「では、お前の言う英雄の敵は難民か? 彼らを仮想的とすることで国民の思想を誘導する。違うか?」
  • 合田「思想誘導は必要だろう。そのために法を曲げることもな。結果が手段を正当化する。これはテロリストにも民主国家にも通用する理論だ」

 

ここも核心なのでやはりはぐらかしている。

 

  • 少佐「難民の排除が国民の総意だと?」
  • 合田「奥ゆかしさがわが国民の美徳だ」

 

これは「イエス」と言っているようなもの。

日本人は奥ゆかしいから「難民出て行け!」とはいわないが、心の中ではそう思っている、という合田の持論。

 

  • 少佐「最後に1つ、公安9課をどう思っている?」
  • 合田「9課、そうだなぁ、不在による憎しみの連鎖はもう止まらない。彼らは総意としての国民の意思と自身の正義、その間で苦悩するだろう」

 

「不在」というのが何のことかは分からない。

9課はこれから難民排斥に傾く国民(合田がそう仕向ける)の総意と、その裏にある陰謀に対する正義感のはざまで苦悩するだろうと予言。

5人目の自爆テロ

5人目のテロリストはやはり難民だった。

バトーはこれを難民からの宣戦布告と受け止める。

恐らく世論もそちらに傾くだろう。

同時に潜入捜査を終えた少佐は、「個別の11人は恐らく合田のプロデュースしたインディヴィジュアリスト、その目的は難民の蜂起、落とし所はこの国に彼らの自治区を作り出すこと」と結論付ける。

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