巨人に巨人を倒させる。
この時点では突拍子もないこと。
後に巨人対巨人が当たり前になる。
アルミンは今後兵士生活において作戦立案に非凡な才能を発揮する。
ジャンは好機を見出し、巨人をかいくぐって本部への突入を指揮する。
成功はしたものの数名は巨人に捕まる。
彼らの死を代償にした成功に、指揮する者の責任を痛感する。
ジャンとミカサ、双方の「現実主義」を対比させ、正へと至る道を模索する。
ジャン
ジャンの現実主義は諦観(ていかん:あきらめ)に根ざしている。
巨人と戦う技術を高めることで巨人から離れるというシステムを「現実」と捉え、巨人との戦いを諦観し、個人的安寧を求めて憲兵団を目指す。
戦闘でガスが切れると「死ぬんだろうな、全員」と諦観。
巨人が仲間を食っているのを諦観し、本部突入。
この成功体験から一瞬希望を見出すも、自分が仲間の死を利用して生き延びたことに愕然とする(さすがにそれも諦観できるほどサイコパスではない)。
そして、自分たちのせいで逆に本部に巨人が集まってきたことで、また巨人との戦いそのものを諦観←振り出しに戻る。
ジャンはここで、個の安寧のためあらゆる現象を諦観した先に死が待っていることを知る。これが後に調査兵団入団のきっかけとなる。
ミカサ
ミカサの現実主義は「闘争」。
幼少期、エレンの「戦え」という声に覚醒し、誘拐犯を刺して生き延びたことがきっかけ。
自分を生かしてくれたエレンを守るために世界と戦っていくことがミカサの現実主義。
しかし、アルミンからエレンの死を聞かされ暴走、その結果死に直面する。
ミカサはここで、安直な闘争は自分はもとより仲間も死に至らしめると学ぶ。
じやのように一瞬諦観に陥るも、またエレンの「戦え」が聞こえてき、再度覚醒。
ここでミカサは「共生」(仲間を見捨てない、仲間のために戦う)を獲得。
ミカサの現実主義が単なる生存欲求や個人的感情から昇華された。
恐らく作者は「個に由来する現実主義は死に帰着する」と説きたい。
ジャンの諦観主義も、ミカサの個人的な愛情や闘争本能もそれぞれ死に帰着しかけた。
しかしミカサが一足先に「共生」に到達し、アルミンを置いていかないという選択をしたことで生が開けた。
ライナー「お前ら、あの巨人についてどこまで知ってるんだ?」
ライナーから見ると、巨人を倒す巨人はどう考えても9つの巨人のひとつ。
当然「始祖の巨人」という可能性も。
「始祖奪還計画」で5年前に壁内に侵入して来たライナーたちからすると、ようやく「始祖の巨人」の手がかりが掴めそうになってきた。
だからライナーは焦って質問した。
アニも気になる様子。
アルミンはエレンの死のショックから回復した模様。
ミカサに触発され、アルミンは持ち前の頭脳を生かし作戦を立案。
今後アルミンは作戦家として頭角を現す。
「おいおい、危なかったなアニ、怪我をしなくてよかったぜ本当に」
アニは「女型の巨人」継承者なので、怪我をするとすぐ不自然に回復するから、仲間や上官から不審がられる可能性がある。
また、傷を負うと巨人化の恐れもあるので。
面倒なことになると「始祖奪還計画」が難しくなる。
ライナーが心配しているのはそこ。
あもそれを分かっているから無視して去った。
ジャンはマルコに「指揮役に向いている」と言われたことで、自分の信条である諦観をベースとした現実主義が壊されたと感じた。
そのせいで仲間を見殺しにしたことへの反省から、もう言うなとマルコに釘を刺す。
マルコはジャンの諦観から来る弱さと現実主義を見抜いていて、それを肯定的に捉えている。
マルコはジャンのおかげで生き延びられたと告げ、ジャンの現実主義に「共生」という概念を付与する。
ここでジャンはミカサ同様、「共生」に根差した現実主義を獲得する。
それが後に調査兵団入団の動機ともなる。
また後々マーレとの共闘にも影響する。
「同感だ。あのまま食い尽くされちゃ何も分からずじまいだ」
「始祖の巨人」の疑いがある巨人の中の人間が他の巨人に食われてしまっては困る。
ライナーたちは9つの巨人のうなじに本体がいるのを知っているので、うなじが食われる前にとりあえず助けたい。
ただ、まだ「始祖の巨人」かどうかは分からないのでここで彼らも巨人化し、本体を奪う気はない。
とにかく、この巨人が何の巨人で本体が誰なのか知りたい。
アニもそれらしいことを言ってライナーを援護。
ちなみに、ライナー、アニ、ベルトルトの三人とミカサ、アルミンを対峙させる構図がなんかやらしい(ほら、ヒントだよ、これヒントだよwと煽られているよう)。
皆は巨人かエレンだったことに驚くが、ライナーたちの驚きはまた違う。
まず巨人から本体が出てきたことによりこれが9つの巨人であることは間違いない。
そしてその本体がエレンなのは見ての通り。
たぶんライナーたちにもこの巨人が「進撃の巨人」か「始祖の巨人」かはまだ分からない。
エレンが「始祖の巨人」も継承していると確信できた段階で連れ去るつもり。
今後はそこも見どころ。